デューク・エナジー

デューク・エナジー社、SAP S/4HANAへの移行によりカスタマーエクスペリエンスの変革を実現

会社概要

デューク·エナジー社は、アメリカ合衆国にある最大のエネルギー関連持株会社の1つで、780万の顧客に電力を、さらに160万人の顧客に天然ガスを供給しています。同社は「カスタマーエクスペリエンスの変革、エナジーグリッドの最新化、お客様と地域社会によりスマートなエネルギーの未来を創るためのよりクリーンなエネルギーの産出」に注力しています。

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    業界: 公共・エネルギー
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    従業員数: 社員2万8千人
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    所在地: アメリカ
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レガシーシステムを統合し、カスタマーエクスペリエンスを改善

デューク·エナジー社にとってカスタマーエンゲージメントはきわめて重要であり、サービス提供している各州でカスタマーサービスセンターを運営しています。カスタマーエクスペリエンス変革というミッションの最初の重要なステップは、全国のカスタマーエクスペリエンス最適化のために内部の複数の請求システムを整理することでした。

同社のサービスは複数の地域と州ににわたり(インディアナ州、オハイオ州、ケンタッキー州、テネシー州、ノースカロライナ州、サウスカロライナ州及びフロリダ州)、それらはすべて合併によるものです。これらの合併のため、同社は4つの別々の請求システムを管理し、700万以上の顧客にサービスを提供していました。既存のシステムは、すべてレガシーなメインフレームとレガシーなテクノロジー上に構築されており、20年以上経過していました。そのいくつかには、まだグリーンスクリーンのものもありました。同社は、この複雑なアプリケーションスタックを単一の請求システムに統合し、コールセンターに問い合わせるすべての顧客に対して、同じ請求のエクスペリエンスを作り出す必要があると理解していました。

「お客様の地域がどこであろうと、すべての州と区域のお客様にサービスを提供すると共に、お客様について良く知る必要がありました。」と、同社のSAP Customer Connect System のシニアITマネージャであるDebbie Smith氏は言います。「現在では、仮にお客様がノースカロライナ州とフロリダ州にいても(同一人物ならば)、1人のお客様と認識できます。一方過去においては、それは当社にとって2人のお客様でした。当社としては同一のお客さまかどうか、見分ける術がありませんでした。

課題

  • S/4HANAの大規模新規導入
  • 4つの複雑な請求システムを統合する
  • 従来のテスト方法を利用した場合は、合計1,300時間必要であり、プロジェクトに大幅な遅れをもたらす
  • Piedmont Natural Gas社との合併によるデータをインハウスで移行する

テストにより円滑なSAPジャーニーを実現

デューク·エナジー社は、再考したビジネスプロセス(請求およびすべての内部プロセス)の基盤となるべき適切なプラットフォームを決定するための評価を実施しました。同社は最終的に、SAP for Utilities、SAP Marketing,、SAP Commerce Cloudを含むSAP S/4HANAの新規導入に取り組む決定しました。この新しいデジタルコアによって、同社は4つのレガシーな請求システムを1つのエンゲージメントプラットフォームに統合すると同時に、データと分析、カスタマーエンゲージメント、および検針から入金の一連のプロセスへの注力することが可能となりました。

「SAP社と協業することで、20年以上存在した4つのメインフレーム請求システムを、当社の全地域向けの1つのSAPソリューションへ移行しました。これは当社のロードマップに掲げていたお客様対応の変革における大きな一歩でした。」とSmith氏は言います。

5年間のプロジェクト中、同社はSAPのリリースを8回に分割しました。最初の数回のリリースでは、CRMを顧客に展開し、あわせてハイリスクなMarketingとCommerceも展開しました。次のステップとして、同社は、4つのレガシー請求システムすべてを一度に置き換える作業を開始しました。

当初から、同社のリーダーたちはテストがプロジェクトの成功にとって重要な要素になることを理解していました。従来の手動テストでは、同社が追い求めるスピード感を持ったイノベーションと精度を維持できないことは明らかでした。プロジェクトを順調に進め、スムーズな正式サービス開始と優れたカスタマーエクスペリエンスを保証するには、リスクを抑えながら効率を最大化するテスト戦略が必要でした。

テスト自動化によりテスト時間を大幅に削減

デューク·エナジー社のITリーダーたちは、SAPリリースをより迅速かつ安全に行うための適切なソリューションを特定するために、テスト市場を調査しました。最終的に、Tricentis Toscaのモデルベースのテストと、SAPとの緊密なパートナーシップが、同社の求める卓越したテストの実現に役立つと判断されました。Fiori、Hybris Marketing、Hybris Commerce、Customer Recommendation engine、SAP ISU、HybrisC4Cにまたがるレジリエントなテスト自動化です。

同社のチームは、過去に使用していた手動テストケースの監査から作業を開始し、最もリスクの高い領域からテスト自動化を導入しました。最も力を入れたのが、リリースごとに繰り返しす必要がある、重要業務のテストケースでした。このリスクベースのアプローチにより、同社の週次SAPリリースに合わせて、さまざまな環境で3回のテストサイクルで実行された、150のテストケースからなるリグレッションテストスイートが生まれました。

「テストケース内で他の区域の顧客データを活用できので、これらのテストケースは書き直す必要がありませんでした。そして、それらのコンポーネントが失敗しない確認を続けると同時に、手動のテスターは、その区域向けのシステムのより複雑なものをテストできました。」とSmith氏は言います。

現在、それぞれのSAPリリースは、毎週行う250の自動化されたテストを含む、5種類のフェーズのテストを実施しています。ITチームが変更をリリースするごとにスモークテストが実行され、製品テストと運用テストのためにビジネスチームに引き渡す前に、システムの重要な要素が正しく動作していることを確認しています。

「以前の手動テストでは、テストケースあたり平均4時間かかっていたのに対し、現在は1週あたり約32時間になりました。」とSmith氏は言います。「4時間×250回を想像してみてください。実行とデータ収集で1,200から1,300時間かかることになります。現在は同じテストケースの実行にかかる時間は32時間です。」

Tricentis(トライセンティス)のテスト自動化により、同社のテストケースは無人で夜間に実行することが可能な上、12時間以下で完了します。過去の手動テストによる方法では決して実現できなかったことです。また、障害の早期検出にもつながり、本番環境にリリースするコードを高品質化する結果にも結びつきました。

Tricentis Toscaで時間とコストを削減

デューク·エナジー社は現在、本番環境で稼働しているSAP Cloud for Customer (C4C) クラウドベースのユーザー環境としては米国で最大規模を誇っています。進行中の同社S/4HANA移行プロジェクトで初期になされた成功の1つは、同社はすでに、SAPシステムから生成したデータに基づいて、顧客向けの統一請求方法をリリースできるようになったことです。これは同社にとって大きな成功で、これにより、検針から入金までのプロセスとカスタマーサポートにおいて、同社が追求した一貫性のあるカスタマーエクスペリエンスが生み出されました。

「当社は、S/4HANAの最初のリリースを、本番以外のプラットフォームに一度置いてから、次にそれを変換するのではなく、最初から本番環境に展開することができました。移行と調整は必要でしたが、当初スケジュールよりも7ヶ月早く本番稼働できました。」とSmith氏は言います。

「昨年は、リグレッションテストのためのテストベットを毎週作成する必要がなくなったことで、430万ドルを節約しました。」とSmith氏は言います。「昨年を通して、テストしていなければ本番環境に移送されていた可能性がある障害を11件検知できました。週次の各リリースの前に、テスト自動化を採用して実施することで、多くの節約と付加価値が生まれました。」

2016年に、同社はPiedmont Natural Gas (PNG)社を合併しました。同社のテストの次の段階として、2024年7月までにSAPをPNG社環境に新規導入するための準備をしています。

「デューク·エナジー社のテスト自動化の世界から得たすべての教訓を生かして、PNG社でもテスト自動化を進めます。デューク·エナジー社では行いませんでしたが、少しシフトレフトを進めて、コンバージョンスペースでの自動化を検討し始めました。そして、テストフェーズの後半のリグレッションテストベットの構築にとりかかります。」とSmith氏は言います。